こんにちは、aestasの石川です。
いつもとは違う動き方で警戒していた台風12号の影響も東京では思ったほど受けず安心しました。
本日は台風一過、夏の気候が戻ってまいりました。
さて、今週は2アイレットのダービーを納品致しました。

黒い革を使用したUチップのデザインです。
2アイレットでは甲からつま先に掛けての縦ラインが強調されることで、同じ木型でもよりロングノーズな印象を持ちます。
それに加えUチップをあしらうことで、プレーントゥならではの清々しさがなりを潜め、全体に落ち着いた紳士の風格が出てきます。
個人的には黒、焦げ茶の革と組み合わせたときに貫禄を感じます。逆に、明るめのお色では貫禄の代わりに色気が出てきますので、それもまた革選びの面白い所です。

2アイレットでは甲の押さえがルーズになりやすいため、足趾の付け根付近から甲にかけて通常よりも抑え込むように木型を設計しております。
ハトメの数が少ないほど羽根と呼ばれる甲を覆うパーツの曲線が強調されるので、デザインの際には特に意識して描いています。
デザインを起こすときにはお客様の足の形(木型の形状)のみならず、体型や雰囲気なども考慮してお一人お一人に合わせてラインを引いていきます。この辺りは木型から作るフルオーダーならではの作業です。
そのような細かな作業を積み重ねていくと、お客様が履いた際に全体が調和し、靴だけが突出して目立つといったことがなくなります。

Uチップのツイストモカは全て手縫いで施しています。
aestasでは靴のメインであるアッパーを木型に釣り込み、靴の形に成型してから縫いを施すオンザラスト式で縫っていますが、オーダー靴業界の中でもなかなか珍しいようです。
平面の状態で縫う場合と比較し、左右の木型が微妙に異なるフルオーダーの場合ですとバランスを崩さずデザインを乗せることが出来るのでその方法を採用しています。

aestasでお作りする靴はカカトの中心部に縫いハギを作らないシームレスヒールが標準仕様です。
毎日の脱ぎ履きで最も負担の掛かる場所ですので、裂ける恐れのある縫い目を入れずにお作りしています。
デザインのライン取りでもそうですが、負担が掛かりそうな場所には配慮しお客様にできるだけ長く履いて頂けるよう意識して製作しております。

アウトソールは革でナチュラル仕上げ、ヒールのみゴムの仕様です。
革は減りやすいイメージが強いですが、製作時に一晩水に浸しておいて3日掛けて乾かすことで目の詰まった革に仕上がっていますので、既製品と比べて長持ちします。
また、目が詰まった分だけコバも毛羽立ちし難くく、お手入れも楽になると思います。
これらの手間暇が値段に反映しているのですが、それ以上の価値を感じて頂ければ嬉しいなと思いながら日々製作に勤しんでおります。
デザインサンプルは常時apego店内に展示しておりますので、お気軽にご来店・ご相談下さい。
毎週、水・土・日はご予約不要でご注文頂けます。デザイン選択から採寸まで、合わせて1時間~1時間半ほどのお時間を頂戴致しますので、余裕を持ってお越し頂ければ幸いです。
【今回の靴】
2アイレットダービー
靴代・・・¥98,000-(マッケイ製法)
※ハンドソーンウェルト製法、ノルベジェーゼ製法の場合¥160,000~
革・・・カーフ+¥10,000-
底・・・レザーソール
※初回は上記靴代の他、お客様専用木型制作の為¥50,000-(仮縫い込)頂戴致します。
2足目以降、フィッティングに関する木型調整代は頂きません。
※現在の納期は約4ヶ月です。
※価格は税抜き。