こんにちは、aestasの石川です。
出歩くのが億劫になるくらいの猛暑が続いていますね。
昨年は夏らしい日が少なかったように記憶していますので、今年は夏を満喫できそうです。
さて、そんな炎天下の中ですが、今回はUチップのダービーシューズを納品致しました。

フルタンニンレザーであるミネルバボックスを使用した一足です。
ミネルバボックスはイタリアの老舗タンナー(革鞣し業者)であるバダラッシィ・カルロ社で作られた、100%植物タンニン鞣し革です。
厳選された原皮を時間を掛けて丁寧に鞣していますので、使い込むことで生まれるツヤと色味などのエイジング(経年変化)は数あるタンニンレザーの中でもピカイチです。
お財布やバッグなどには数多く用いられていますが、靴に使用しているところは珍しいと思います。
表面が繊細な故に製作過程で汚れやすく、またオイルを多分に含んでいて接着剤などが効きにくいことが敬遠されている理由です。

ミネルバボックス特有の自然な揉みシボが型押しでは出せない上品さを演出してくれます。一枚一枚表情が違うのも特徴的ですので、オーダー靴に最適の材料です。
こちらの靴は、ハンドソーンウェルテッド製法でお作りしています。この製法では、靴に取り付ける革の帯(ウェルト)を手縫いによって中底に”直接”縫い付けます。
既製靴で主流のグッドイヤーウェルテッド製法は、手縫いではなく機械で”間接的”に中底にウェルトを縫い付けています。
単純に手縫いか機械縫いかの違いだけではなく、中底に直接縫い付けるか、間接的に縫い付けているかがフィッティングに大きく関係してきます。
簡単に言ってしまえばアウトソールとの間に入れ込むコルクの厚みが、ハンドソーンではより薄く、グッドイヤーウェルト製法ではより厚くなります。
厚ければ厚いほど良く思えますが、コルクは沈み込みが強いため、履き込むことでフィッティングが大幅に緩くなってしまいます。
ハンドソーンでは手縫いを施すために目の詰まった厚みのある中底を使用するため、足型に沈み込む役割はこの中底が担ってくれます。そのため、コルクは隙間を埋める役割が主で、履き込むことによるフィッティングの緩みは最小限で済みます。何にでも共通しますが、簡素化されることで失ってしまう機能が存在するということですね。

こちらのお客様は前足部に向け内振りが強く、既製靴ではなかなかフィッティングの難しい足をしてました。
靴に対して足の入る方向が合わない場合には、母趾や小趾に大きな負担が掛かり、長年をかけ外反拇趾や内反小趾を引き起こしかねません。
また、かかとも捻じれて納まるために靴ズレも起きやすくなります。
フルオーダーではお客様の足をベースに専用に木型を作製致しますので、足の向きや指の位置などが靴と足とで合致します。
ソールはお客様のご要望でダイナイトを使用致しました。
ダブルソールにしましたが、ビブラム社のものと比べ薄い作りですので返りも損なわず、見た目もわりとスッキリです。

ソールについてはこの他にもスポンジ素材やクレープ素材など幅広くご対応しておりますので、一度ご相談下さい。
フィッティングは勿論ですが、デザインや革選び、ソールの材料選びもオーダーメイドならではの楽しみです。
是非、合わせて楽しんで頂ければ幸いです!
【今回の靴】
Uチップダービー
靴代・・・¥160,000-(ハンドソーンウェルテッド製法)
※マッケイ製法の場合¥98,000~
革・・・ミネルバボックス カスターニョ
ソール・・・ダイナイトソール ダークブラウン
※初回オーダー時は上記靴代の他、別途木型制作代として¥50,000-(仮縫い代込み)を頂戴致します。
2足目以降フィッティングに関する木型調整代は無料です。
※現在の納期は約4ヶ月です。
※価格は税抜き。